本日より投資に絡む心理学、脳科学の話を掲載していきます。最初の何ヶ月かは、最新の脳科学などに基づく脳と心のしくみを説明しながら、そこから導き出されるトレーダーとして必要な心構えや脳の使い方に言及していくつもりです。よろしくお付き合いください。
まず脳と心のしくみの基本になるのは、人間には「感情」と「思考」があるということです。この2つの区別は当たり前のようでいて、実は普段の生活において私たちはほとんど意識していません。たとえば今この瞬間に心に浮かんだ出来事は、「感じた」ことなのか、「考えた」ことなのか、などといちいち区別して考えていない(あるいは感じていない)と思います。昨日の夜何を食べたかを思い出してみて、「ハンバーグだった!」と思い出すのの思考で、「その時のハンバーグのおいしさ」を思い出しているのは感情です。これからの脳とこころのしくみの話においては、「感情」と「思考」の違いを意識することが、非常に重要な概念となっていきます。
結論から言ってしまえば、優秀なトレーダーとは、感情と思考の違いを意識して、それぞれをバランスよくコントロールできる人です。またそれはトレーディングだけに関わらず、仕事やスポーツなどで成功している人というのは、すべからく感情と思考をバランスよく使える人ということが言えます。感情と思考が別のものであるという考え方そのものはずいぶん昔からありましたが、実際に脳の中で感情を掌る部位と思考を掌る部位が物理的にも違うということがわかってきたのは、脳科学の発達によるものです。大雑把に言えば感情は「辺縁系」と呼ばれる脳の中でも内側の方に入っている、進化の過程で言えばより古い脳の部分が掌っており、思考はいわゆる「前頭葉」と呼ばれる我々の額の辺りに広がる、より新しい脳の部分が掌っていることがわかっています。
人間の進化の過程で、感情より後に思考が備わるようになったと同じように、人の成長においても、幼児の時は感情が優勢ですが、育ってくるに従って思考が備わってくるのは皆さんもご存知の通りです。そして現代においては、頭が良い人間とは思考が発達している人間を指すようになり、感情は人間にとって余計なものであるかのように扱われるケースもありますが、決して感情が不必要なわけではありません。それぞれに役割の違いがあるわけで、それぞれの役割を活かしてあげることが上手な脳の使い方ということになります。
次回からは感情と思考のしくみを詳しくみていきます。