白黒思考と並んで有名な認知の歪みが「べき思考」です。
「~すべき」、「~あるべき」という思考パターンです。
モノごとは無色透明で、それに価値づけをしているのは自分であるということに気がついていない典型的なパターンですね。
もっとまじめに勉強すべき、もっと大事にされるべき、もっと言うことを聞くべき。
この思考が他人に対して向けられると、イライラ、ストレスの原因になります。自分は「~すべき」と思っているのに、相手はそうではないと、ストレスになるわけです。
一人ひとりの価値づけ、意味づけは全て異なるので、「~すべき」が一人ひとり異なるのは当然なのに、同じであることを前提に考えてしまうことから起きるストレスということになります。
またありがちなのが、人ではなく、出来事に向けられる場合です。
トレーダーの皆さんであれば、マーケットに向けられる場合が典型です。
「マーケットがこう動くべき」、
「マーケットは自分をもうけさせるべき」
一方、この思考が自分に向けられると、落ち込みやうつの原因になります。
意識では「~すべき」と思っているのに、その通りにできないもう一人の自分に対して憤り、失望するわけです。
自分で設定した価値基準を達成できない自分に失望してしまう。
自分で設定した価値基準なので、本来は「~すべき」ではなく、「~したい」という思考のはずなのに、「~すべき」になってしまっているのは、実は無意識のうちに他者から与えられている価値基準であるということです。
実際には、親、先生、社会から与えられた価値観であることが多いわけです。
まじめな人ほど、そのように他者から与えられた価値観で自分を縛っていることに、気がつかない傾向が強くなります。
よくスポーツ選手などが、「オリンピックを楽しんできます」などと言うのは、「金メダルを取るべき」「良い成績を取るべき」などのべき思考では、ストレスと緊張で、能力を十分に発揮できないことを知っているからです。
「金メダルを取りたい」、「良い成績を取りたい」など、あくまでも自らの欲求として、自らが設定した価値観であることを意識することで、力が発揮できるわけです。
トレーディングにおいても、まずは「勝つべき」、「もうけるべき」を「勝ちたい」、「もうけたい」くらいに力を抜くだけでも、結果は変わってくるかもしれません。


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