心理学ではリフレーミングというテクニックがあります。リフレーミングとは「ある枠組み(フレーム)で捉えられている枠組みをはずして、違う枠組みで見ること」(WIKIPEDIA)を指します。

一番わかりやすい例は、コップ半分の水を見て、悲観的な人は、「あと半分しかない」と捉えますが、楽観的な人は、「まだ半分もある」と捉えるということです。ポジティブシンキングの考え方からは、「あと半分しかない」と考えてしまう人に、「まだ半分もある」とリフレーミングしましょう、ということになるわけですが、事はそう単純ではありません。

「半分しかない」のか「半分もある」のかは、その時々の状況に応じて判断するというのが重要だということです。砂漠のど真ん中でさまよっている時に、「半分もある」と楽観的に考えて、水を全部飲んでしまっては判断力が皆無ということになります。そしてより根底には、状況そのものには良いも悪いも無いのにかかわらず、私たち一人ひとりが無意識のうちにそれぞれの価値を付与してしまうという、このブログでも再三繰り返している脳の構造があります。

「コップに水が半分入っている」という状況そのものには、良いも悪いも無く、単にそのような状況が発生しているだけですが、その状況を見た一人ひとりが、「半分もある」という(どちらかというと)ポジティブな価値判断をするのか、「半分しかない」というネガティブな価値判断をしているということです。

どうして価値判断をしてしまうかと言うと、人はその後に行動をしないといけないからです。行動するためには、状況に対して何らかの価値判断をする必要があります。「半分もある」と価値判断することで、「飲む」という行動に進むことができるし、「半分しかない」と価値判断することで、「飲まない」という行動に進むことができるということになります。

人間は朝から晩まで次々に行動し続けないといけないので、一つ一つの状況に対して無意識の価値判断を瞬時に行い、行動し、また次の状況に対峙するということを繰り返しています。しかしその価値判断は、あくまでも行動を決めるための自分なりの「キメ」であり、絶対的な真実でも何でもない、という構造を認識しておくことが重要です。

「半分しかない」と考えるのも、「半分もある」と考えるのも、自分なりの「キメ」の問題である、ということです。

世の中に絶対的な真理などほとんど無い中で、私たちの価値判断は、全て自分なりの「キメ」でしかないということです。そしてリフレーミングというのは、自分なりの「キメ」を、別の「キメ」に変えてみるということであるということになります。

今日の記事を読んで、トレーディングに拠る損失やミスをネガティブな事として捉えてしまうのも、自分なりの「キメ」だったのだと少しでも感じていただければ、メンタルスキルの向上に役立っていることになります。


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