溶かす瞬間のリアルな叫び

丁か半か。
吉か狂か。

カジノで106億8,000万円失って特別背任罪で実刑判決を受けた大王製紙創業三代目。
この転落記の中に投機の真実を少しでも知ることが出来ればと思い手にした一冊。

溶ける

期待していたのは、のめり込んでいく過程と、やられる瞬間の心理描写。
勝算や優位性をどう考え、どう取り組んでいたかということ。

先物やオプションという投機の世界で大なり小なり味わう瞬間的な葛藤。
ギャンブラーとトレーダーが直面するやられたときの心理状態。
似ている部分は多いはず。

私は、ギャンブルもトレードも本質的には同じ物だと思っています。

本物のギャンブラーが朽ち果てていく姿。
それは投機の世界で生きるトレーダーにとって大変参考になるし、反面教師として脳のしわにしっかりと刻んでおかなければならない貴重な仮想体験になります。

そういう意味で、かなり期待感を持って本書を手にしました。
しかし、

運と偶然性のみが支配するバカラの勝負に、私は全生命を賭けて挑んだ。目の前に積まれた20億円によって、カジノ史上誰も成功させたことがない軌跡を呼び起こすのだ。そして私は伝説を作る。目の前で開きかけた地獄の釜の蓋を、我が強運によって轟音高らかに閉じてみせる。

バカラとは優位性もなにもない単なる丁半ばくちだそうです。
同じカードゲームでも、駆け引きやカードカウンティングが有効なポーカーとは全く異なるものです。

運だけで勝負が決まるバカラにここまでのめり込んだというお話にただあきれるばかり。
残念ながら、本書で展開されたのは私が求めていた相場の世界とは全く異なるものでした。
勝ち目のない勝負に、資金力にものをいわせて挑み、最後は力尽きるという単なるギャンブル中毒にかかったボンボンの物語。

胃から滲み出る液体

わずかでも得るものがあったとしたら、損失が膨らむ瞬間に胃から得体の知れない液体が噴き出すあの感触。ほんの少し思い出すことが出来ましたが、自分の経験を超えるものではありませんでした。

残念度★★★★

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